古内東子 Special Interview



1993年に「はやくいそいで」でデビューして以来、常に“恋愛”にこだわった楽曲制作、精力的な音楽活動でファンを魅了し続けてきた古内東子。デビューから早いもので18年、コンスタントに新曲をリリースするなか、近年は96年のヒット曲「誰より好きなのに」が、さまざまなアーティストにカヴァーされるなど、今やJ-POPを代表する女性シンガー・ソングライターとなった。2008年にエイベックス移籍した後は『IN LOVE AGAIN』『PURPLE』と、クオリティの高い意欲作をリリース。そして今回、前作から約1年足らずの短いインターバルで『透明』が届けられた。セールスも堅調に推移中。充実した音楽活動を続ける彼女にアルバム制作秘話はもちろん、その原動力となっているだろうプライベートなどについての近況を聞いてみた。

 

 

-- 昨年、新丸ビルのイベントに古内さんが出演したライブを拝見しました。素晴らしいライブだったのですが、特に「Beautiful Days」を歌われたときに、観客から吐息のようなどよめきが起こりました。覚えていますか? この曲は古内さんのレパートリーの中でもすっかりスタンダード・ナンバーになった気がしますね。

 

そうですね。私には誰もが知っている曲があまりないのですが……(笑)。でも、この曲はCM曲(パンテーン)としてずいぶん長い期間にわたってテレビで流れましたからね。改めてテレビの力ってすごいなって思いました(笑)。

 

-- 古内さんは早いものでデビューして18年という歳月が経ちます。でも同期デビューで古内さんと同じようなスタンスでシンガー・ソングライターを続けているアーティストは少ないですね。

 

そういわれるとあまりいないかも。デビューした頃は学生でしたからね。大学に行きながら音楽活動をしていたので、当時はよく「二足のわらじ」的なことを言われていました。あの頃は音楽活動に集中したいのに、学業があったので、歯がゆい気持ちになっていましたね。だから、学生生活を終えて、音楽一本になったときすごく楽になって、初めて「音楽でやっていくんだな」って思ったことを思い出しますね。

 

-- 90年代かあら歌詞を含めてさんざん「大人っぽい」と言われていたと思うんですけれど、今改めて振り返ってみてどうような感想を持ちますか。

 

当時はピンと来なかったんですけど、今振り返ると「大人だな」と思います(笑)。『SLOW DOWN』というアルバムに「Alienation」という曲があるんですが、あれはデビューする前に書いた曲なのに、今でも違和感なく歌えますからね。

 

-- なるほど(笑)。ずっと活動できているのはもちろん才能が根底にあるとは思いますが、私個人の勝手なイメージでは、古内さんは音楽だけにこだわるのではなく、生活の中に音楽があるんじゃないかと思うのですが。充実した生活の中から音楽が生まれてくる感じですか。

 

歌詞の面でいうと日常生活が重要になってきますね。自分にはオタク気質もあるので、窓のないスタジオにこもるのは嫌いじゃないです。逆にライブをやることも好きなんです。でも音楽以外のことをしているときは、音楽のことはほとんど考えないですね。メリハリのある生活をしていると思います。曲を作るにしてもアレンジを考えるにしても、最初から作品を作ろうと思って作業に入りますからね。ちなみに今はアルバムが発売になったばかりなので、音楽制作は全くしていません(笑)。

 

-- 古内さんはデモテープを作る段階で明確なイメージが出来上がっているんでしょうか。

 

私はデビューの頃からマック(PC)を使用してデモを作ってきたんですよ。当時は女性でそういう作り方をする人はまだ珍しかったですね。しっかり作りこんだデモをアレンジャーに渡して、変えない場合もありますし、リズムを含めてイメージとまったく変える場合もあります。

 

-- 個人的に、昨年の『PURPLE』は、古内さんのキャリアの中でも分岐点的となったアルバムじゃないかと思っていました。このアルバムは、古内さんにとってはどんな位置づけの作品だったしょうか。

 

プロデューサーの河野伸さんとの付き合いがここ数年ずっと続いていて、今度のライブではバンドのバンマスをやってもらいます。そんな関係性の中で、初めて作った『PURPLE』は、全曲河野さんにアレンジをしてもらったんです。今まで一人の方に全曲のアレンジをしてもらいたいと思っていたんですけどなかなか実現できなくて……。やっと安心して身を委ねられる方に出会ったという感じですね。そういう意味では濃い1枚だったかな、って思いますね。

 

-- 『PURPLE』は素晴らしいアルバムで、その余韻に浸っているところで、意外にさらっとニューアルバムが完成して驚きました(笑)。曲作りが自然に行われたような印象ですが。

 

今回は初のセルフプロデュースなので、『透明』というタイトルどおり、詞の世界観を含めて、何のフィルターを通さず制作をしました。それが曲作りやアレンジに現れているんだと思います。曲作りも苦労していないし、楽しかったですよ。

 

-- 『透明』というキーワードはシンプルな言葉ですが、インパクトがあって古内さんにぴったりですね。

 

今回は最初からアルバムのタイトルを漢字二文字にすることは決めていました。『PURPLE』から時間も経っていないし、なんとなく『PURPLE』から繋がっているような気がするんです。最終的にはインスピレーションで決めた感じですね。

 

-- 作り終えて、このアルバムにどんな印象をもたれますか。古内さんならではの究極のラブソング・アルバムになったと思いますが。

 

恋愛の中のすべての感情が収められているアルバムになっていると思いますね。12曲全曲がラブソングですし、それぞれの曲でいろんな場面や気持ちを歌っているので、聞いてくれる人も「今日はこの曲の気分」「明日はこの曲の気分」というように、気持ちがアルバムとリンクするんじゃないかな。忘れかけていた大切な感情を思い出させてくれるようなアルバムになったと思いますね。

 

-- エイベックスに移籍してからの3枚のアルバムはジャケットが素敵ですね。ジャケットへのこだわりはいかがですか。

 

ジャケットワークに関しては、私が信頼している女性のデザイナーにお願いしています。その方からアイデアをいくつかいただく中から選んでいます。今回に関しては寄りの写真にしてほしいと要望を出したくらいですね。私も近年のジャケットは気に入っていますね。

 

-- 『透明』に収録されている「君がいるから」は名曲ですね。男性目線から見ても切ないです。近年は歌詞の中の二人称に「君」という表現が増えてきましたね。

 

そうですね。「あなた」と「君」が半々になってきました。私はそもそも昭和の女なので(笑)、「後ろからついていける男の人がいいな」「男の人に守ってほしいな」「男性にもそうあってほしいな」と思っていたんです。歌詞でいうと「私」は男性を見上げているイメージなんです。でも、最近は時代も変化してきて、恋愛のスタートが男女対等のような気がするんですね。「守ってほしい」「守ってあげたい」とか、「話を聞いてほしい」「話を聞いてあげたい」みたいな。「君」という言葉は目線が対等な感じがします。

 

-- なるほど。興味深いです。あと、ここ2年はニューヨークでのコンサートが恒例になっていますね。

 

ずっと弾き語りのコンサートをやっているので、いつかニューヨークでもやりたいなって思っていたんです。それで、何年か前にニューヨークに滞在したとき、偶然同じ会場(ジョーズパブ)で矢野顕子さんのライブを観る機会があったんです。そのときからそこでライブをやりたいなと思っていたら09年にやることになって……。1回目は現地に駐在している日本人のお客さんが多かったんですが、2回目の2010年はJ-POPファンみたいなアジア人のお客さんが多かったですね。ソーシャルネットワークなどで、私を知って見に来てくれたんだと思うんですが、1年で世の中のネット事情が急速に変わったんだなーということをすごく実感しました(笑)。またやりたいですね。

 

-- ブログなどを拝見してもコスメやファッション、グルメなど常に好奇心旺盛な古内さんが見受けられますが、最近はどんな感じですか。

 

ブログは毎日更新していますからね(笑)。最近のブームはなんだろう……。そういえば、自分の中で、あんなに盛り上がっていた焼肉ブームが去って行ったような気がしますね(笑)。単純に食べ飽きたのかな(笑)。あまり盛り上がらない……。最近のブームはワインですかね。ワインに合うバールによく行っていますね。

 

-- 結構目利きだったりするんですか。

 

それはないですね(笑)。安くても美味しいものもあるし、高いのに今ひとつのものもありますからね。でも、ワインと音楽ってとてもよく似ているんですよ。私は自慢でもなんでもなく、いまだに音楽のコードネームを知らないんですよ。自分でピアノを弾いていてもそれがなんというコードなのか、いまだに分からない(笑)。感覚で曲を作っているんです。だからレコーディングやリハーサルのときに周りの人に教えてもらったりして。何回聴いてもコードネームが自分の頭の中に入ってこないように、ワインの知識も入ってこないんです(笑)。ワインも音楽も感覚的に好きということなんでしょうね。

 

-- それはちょっと驚きました。4月にはライブ(4月29日東京国際フォーラム)も控えていますね。

 

久しぶりのフルバンドでのコンサートをやります。ちょうどいい季節だと思うので、コンサートが終わったらまっすぐ家に帰りたくなくなるような、そんな素敵なコンサートにしたいなと思っています。ぜひ遊びに来て下さい。このアルバム『透明』をじっくり聴いていただき、ブログも読んでいただき、私のことをさらに知っていただければと思います(笑)。