吉澤嘉代子Special Interview ~ 吉澤嘉代子の描くラブソング



空想癖が強く、引きこもりがちだった少女は、ある日魔女に憧れていきなり魔女修行を始める。映画「魔女の宅急便」の主人公を地で行く少女は、16歳で作詞・作曲を始めることで、世の中とつながることが出来るようになったのだという。そんな妄想系アーティスト吉澤嘉代子の中には、誰にも想像もつかないような様々な妄想の世界が広がっているようだ。3月に発売になった初のフルアルバム『箒星図鑑』から早くも半年で、6曲入りのミニアルバム『秘密公園』を発売。MUSICSHELF初登場の吉澤嘉代子に、その生い立ちから、最新アルバムの事までインタビューさせていただいた。

 

ーー MUSICSHELFは初登場という事で、あらためて、いろいろと聞かせてもらいますね。よろしくお願いします。

 

よろしくお願いします。

 

ーー お会いした第一印象はとても控えめな感じなんですね。

 

歌を聴いていただくと、元気なイメージを持っていただくようなんですが、わりと普段はこんな感じです(笑)

 

ーー シンガーソングライター吉澤嘉代子とはひと味違った魅力を発見した感じです(笑)

 

普段、自分から殻を破るタイプではないので、歌やライブでその主人公になりきることで、物語に入り込みたいという願望があるんです。

 

ーー 子どもの頃から想像や妄想が好きだったんですか?

 

子どもの頃はあまりにも人見知りの子どもでした。いわゆる「中二病」というものだったと思うんですけど、妄想が過ぎて自分は特別な力を持っているのではないかと思いまして、魔女修行を始めたんです。

 

ーー 魔女修行を始めるきっかけは何だったんでしょうか?

 

学校に長い間行けなくなってしまった時期があって、そんな時に魔女にさらわれる夢を見たんですね。その夢はすごくリアルで怖い夢だったんですけど、もし魔女にさらわれていたら、自分は特別な人間になっていたかもしれないと思って、それがきっかけで魔女修行を始めました。当時住んでいた家の屋上に掘っ立て小屋があって、そこを自分部屋にして魔女修行をしていました。お年玉で箒を買って、飼っていた犬に「本当は人間の言葉が話せるんでしょう?」と話しかけたりして(笑)。それをきっかけに魔女関連の本をたくさん読むようになりました。

 

ーー まさしく映画「魔女の宅急便」の世界じゃないですか?(笑)そういわれると、吉澤さんの雰囲気は主人公のキキっぽいです。

 

え、そうですかね(笑)いまだに少女の私が私の中に残っているんです。逆にすごく冷静な部分もあったりするので、すごくアンバランスだと思います。

 

ーー 魔女修行は具体的にどんな事をしていたんですか?

 

箒で飛ぶ練習をしたり、動物に話しかけたり。あとは、とにかく本を読みました。いつも怒られていましたけどご飯を食べながらでも読んでいました。自分の思っていることを上手く言葉にできない子どもだったので、本を読み、詩を書くことで自分の中にある気持ちや想いを消化させていたんです。

 

ーー 当時、感銘を受けた本があれば教えて下さい。

 

いしいしんじさんの「ぶらんこ乗り」という本です。声が出なくなってしまった弟をもったお姉さんの話なんですけど、現実なのか夢なのかそんな世界を進んでいく物語で、当時、私が現実と妄想の間をごっちゃに生きている時期だったので、内容が心情に訴えかけてきてすごくシックリするお話でした。

 

ーー その学校に行けなかった時期が、アーティスト吉澤嘉代子を生み出した貴重な時間だったんじゃないでしょうか?

 

そうですね、そう思いたくて、それを肯定したくて、それが現在の私の生きる源になっているんだと思います。私と同じような境遇の子どもたちに安心させてあげたいという気持ちもあります。

 

ーー お父様の影響で、井上陽水さんを聴いて育ったとプロフィールに書いてありましたが、陽水さんの影響も受けていると思いますか?

 

受けていると思います。父が陽水さんの物まねをずっとしている人だったんです。近所ののど自慢大会に出たり、車の中にはかつらとサングラスがいつも置いてあったりと・・・(笑)。なので、陽水さんの曲か、父の歌う陽水さんの曲しか流れていない家庭でした、かなり陽水さんが私の中に刷り込まれています。陽水さんの、物事に対するとても冷ややかな視点が、逆に私にとって信頼できる部分なんです。

 

ーー そして、吉澤さんは16歳で作詞・作曲を始める事になるんですが、それまで自身に蓄積されていた想いのようなものが、噴き出したような感覚だったんでしょうか?

 

そうですね、それまで人とうまくコミュニケーションを取れなかった自分が、曲に想いを落とし込むことで出口が見つかって、やっと世の中とつながる事ができた感覚です。

 

ーー それで高校で音楽活動を始めるようになるわけですね。

 

高校で弦楽部に入部して、いまも仲の良い友だちと出会いました。それでバンドを組んだんですけど、最初にカヴァー曲を歌ってみたら、しっくりこなくて、やはり自分の言葉で表現をしたいと思ってオリジナル曲を作るようになりました。

 

ーー 吉澤さんの曲を聴いていると、どんどんアイデアが湧き上がって、すごく多作なイメージがあるのですが

 

当時は1シーズンに1曲位しか作れませんでした。

 

ーー そうなんですか。意外でした。

 

ものすごくこだわりが強過ぎて自分をがんじがらめにしてしまうので、そのこだわりを捨てられたらどれだけ楽なんだろうっていつも思います(笑)

 

ーー こだわり続けて作ることってやっぱり大変ですよね。

 

はじめはお仕事になって締切ができて自分の限界を感じた瞬間はありました。でもがんばってがんばって出来上がったときの達成感は今まで感じたことのないもので、子どものころから何かを続けるというのができなかったので。

 

ーー 学校を出ても宿題はありますよね。

 

そうですよね(笑)おとなになっても

 

ーー 吉澤さんは、作詞も作曲もする女性シンガー・ソングライターなわけですけれど、意識して聴いていた女性アーティストはいたんですか?

 

はじめて買ったCDは矢井田瞳さんです。その頃、自分もシンガーソングライターになりたいと思ってテープレコーダーに吹き込んだ私の声を聴いたら「なんて子どもの声なんだ!」ってショックを受けて、私には歌手はムリだなって思いました。

 

ーー 2010年にオーディション(ヤマハ主催のコンテスト“The 4th Music Revolution”JAPAN FINAL)を受けて、見事合格するわけですが、何故オーディションを受けようと思ったんでしょうか?

 

今後どうやって生きていこうかと迷っている時に、「オーディションを受けてみれば」とある方に言われたんですね。当時MySpaceをやっていたんですが、たまたま開いたページに偶然オーディションの広告が載っていたので、応募をしてみたんです。

 

ーー 初めて受けたオーディションで、いきなりグランプリを受賞とオーディエンス賞を受賞したわけですね。

 

「みどりの月」という曲で賞をいただいたんですが、現在のディレクターが、歌の出だしの♪エメラルドグリーンの~♪というフレーズを気に入って下さって、それがきっかけで現在に至るという感じなんです(笑)。とっても緊張していて何がなんだかよくわからず、「たぶんあの人が優勝するんだろうな」とか妄想したり、そしたらまさか地元のストリートライブしかやったことのないような私がグランプリを受賞するだなんて思ってもいなかったので、本当にビックリしました。

 

ーー 受賞してもすぐにデビューではなかったんですよね。そこからメジャーデビューを目指して更に頑張っていったと。

 

そうですね。小さい頃の私のような、そんな子どもたちにも届いてほしいというのが一番にあったので、そんな大きな舞台に立ちたいってずっと思っていました。

 

ーー 人前に出るのが苦手だった吉澤さんがその間もストリートで歌っていたなんて、これもちょっと意外でした。

 

中学校の頃の親友がいるんですけど、地元で毎週金曜日にストリートをやっていたんですけど、その子がずっと応援してくれてチラシを配ってくれたり、お客さんが誰もいないときは、寒い日でもお客さんになってもらって観ててくれたりして、なのでそんな友だちのお陰だと思っています。

 

ーー 2013年にインディーズ・アルバム『魔女図鑑』を発売して、2014年に念願のメジャーデビューを果たすわけですね。

 

はじまりでいうとインディーズでリリースした『魔女図鑑』がいまの私のはじまりだと思っています。これまでも自分の中では曲を作った瞬間が大事だったので、その曲を世の中に出すという重要さをそのとき改めて実感しました。

 

ーー でもメジャーデビューするというのはひとつの達成感はあったんじゃないですか?

 

そうですね。達成感というよりも、グッと力が入る感じはありました。例えると船の上にいろんなものを乗せて私が舵取りをしているようなイメージなんです。船の上には少女時代の私も乗っているので、私がしっかりと舵取りをしなくちゃいけないという使命感に駆られています。

 

ーー まさか”大きな船を舵取りする役割”になるだなんて、子どもの頃の吉澤嘉代子に教えてあげたいですよね! そしてメジャーから2枚のアルバム『変身少女』『幻倶楽部』という6曲入りのミニアルバムをリリースするわけですが、6曲入り、そしてミニアルバムについてのこだわりはありますか?

 

ミニアルバムというのは、コンセプトを決めて制作できるのでとても楽しい作業なんです。『変身少女』はラブリーポップというのがコンセプトで、乙女のドタバタ劇がこのミニアルバムには凝縮されています。2枚目の『幻倶楽部』ではガラッとイメージを変えてみたかったので、ドロドロしたものや狂気的なエッセンスが含まれている、カオス的なものになったかなって思っています。

 

ーー これまでの作品から想像すると吉澤さんがコンセプトを考えてるときって、大変というよりとっても楽しそうなイメージがあるのですが。アイデアはやっぱりいつも頭の中にあるのでしょうか。

 

そうですね(笑)。いつも頭の中にありますね。

 

ーー 2枚のミニアルバムを経て、2015年3月にはファースト(フル)アルバム『箒星図鑑』が発売されました。

 

このアルバムは、いままでの作品とは違って私の少女時代というものをパッケージにしなくてはいけないという、私自身の使命感を背負ったような作品なんです。現役の少女時代を過ごしている人たちが、いつか私の歌やメッセージに出会ってくれたとき「これはもしかして私のために書いてくれた曲なの?」って、過去の私と同じような気持ちで受け止めて欲しいという、そういう思いがありました。

 

ーー そしてファーストアルバムの発売から、わずか半年でミニアルバム『秘密公園』が発売になりました。

 

前回は、ファーストアルバムで私の少女時代をパッケージに収めることが出来たので、今回はそこから一歩踏み出した作品を作りたくて、シンプルでロマンティックという、実は私の中では最もイケイケなテーマがコンセプトになっている1枚です。6曲中5曲が、このアルバムのために新しく書き下ろした楽曲です。

 

ーー 6曲中5曲書き下ろしだと、かなり締切と戦ったんじゃないですか?

 

そうですね(笑)若干守れなかったんですけど。ツアーが5月にあったのでその前後にかなり自分を追い込んで書きましたね。

 

ーー 初のラブソング集という事ですが、実際にラブソングに真正面から向き合ってみていかがでしたか?

 

もともとはラブソングを書くのがとても苦手だったんです。「ありのまま」とか「等身大」という言葉が苦手で、女性シンガーソングライターって”曲=私”みたいな、そんなことは決してないですけど、でもそう思われる事に抵抗がありました。そこで歌詞の中にちょっとした飛び道具を登場させたり、ラブソング自体を少し歪ませたり、私なりのやり方でようやくラブソングが作れるようになりました。

 

ーー アルバムの1曲目「綺麗」はポップですごくいい曲ですよね。アレンジもとても素晴らしいんですが、この曲のアレンジの決め手は何だったのでしょうか?

 

「綺麗」というタイトル以上、綺麗なアレンジにしたいというのが私の中にありました。そこで今回初めてハープを入れてみたんですが、楽器の中で一番美しい音色だと思っていて。

 

ーー 「綺麗」のMusic Videoもジャケット写真のピンクの衣装で登場していますね。

 

ジャケットは「綺麗」をイメージした夜の公園で撮影をしたんですが、公園という、恋をすることで時間が止まってしまう、瞬間を封じ込めた時間軸のない世界という意味でのパラレルワールドを表したいと思って、キラキラ、モクモクした公園という公共の場所が秘密になるときというのを表したかったんですけどMusic Videoもそんなイメージで作りました。

 

 

ーー ラストナンバーの「真珠」は、個人的にも大好きな曲で、ホント素晴らしいバラードですよね。

 

ありがとうございます。この「真珠」という曲が今回のアルバムを作るきっかけになった曲とも言えます。大学生の時に書いた曲で孤独だとか一人で居ることが悪いというような風潮が世の中にはあると思うんですけど、誰にも踏み入れられない領域があるからこそ、人は人と関わろうとするんじゃないかと思うんです。だから、この曲は「孤独」というものに対して、否定も肯定もしないという、「孤独」をテーマにした曲です。

 

ーー 『秘密公園』というタイトルは、最初からこだわって決めていたタイトルだったんですか?

 

今まで4文字の漢字のタイトルで作ってきたので、そろそろ他のアイデアも考えようかなって思ったんですけど「秘密公園」という言葉がフッと浮かんでしまったので(笑)。

 

ーー 「秘密公園」という言葉が様々なイマジネーションを掻き立ててくれます。

 

常に易しい言葉の組み合わせで、新しいイメージを表現していきたいと思っているんです。

 

ーー きっと吉澤さんは本を読んでいる時に自分の中で映像化できているんでしょうね。

 

そうですね。それはありますね。

 

ーー ちなみに好きな響きの言葉ってあります?

 

“どしゃぶり”ですね。響きとそのものが合致している。“どしゃーっ”て(笑)子どもの頃は雨の日が好きでした。ずっと家にいたので天候の変化を眺めているだけでもエキサイティングでしたね。

 

ーー 吉澤さんの詞の世界も、もはや誰も近寄れない領域なんじゃないかな?と思ったのですが、スタッフさんから詞に関するアドバイスなんていうものはあるんでしょうか?

 

ありますね。私が譲れない部分はケンカですね(笑)。たまに泣いたりしますし、でも、お互いにいいものを作ろうとしてのディスカッションなので、手をつなぎながら頭突きし合っているような(笑)。私がすべての曲を自分勝手に作っていたら、出来なかった作品もあったと思います。でもこれがあるから成長できているので。

 

ーー 「吉澤嘉代子 秘密ツアー ~8都市をめぐる秘密公演~」も始まりますね。

 

吉澤 今まで小芝居を入れたライブをやって来たんですが、「秘密公園」は、王道なものを作りたかったのでアルバムなので、アルバムに真正面から向き合ったようなライブになると思います。

 

ーー ライブも吉澤さんの演出が盛り込まれているんですよね。

 

はい。ここでこうしてとかセリフも全部台本を書きます。

 

ーー あらためて『秘密公園』で伝えたかったメッセージはありますか?

 

メッセージは今まであまり持ったことがなくて、こういうものを伝えたいという強烈ものはないんですが、現代は、音楽を聴く時って一人で聴くことが多いと思うんですね。ですから私が子どものころ小説を読んで疑似体験をした人生が広がるような感覚だとか、一瞬の逃げ場所になるという感覚だとか、曲で表現できたらいいなって思います。そして私の曲を通じて、まるで自分自身の事を歌っているんじゃないか、と錯覚しながら聴いてくれる人がいたら嬉しいですね。

 

ーー なるほど、ここまでお話を聞いていると、吉澤さんの「魔女修行」というはまだまだ続いていくというイメージですよね。

 

そうですね。ときどき「魔女キャラやめたんですか?」って聞かれるんですけど(笑)それはキャラクターではなくて、私が生きてきた証のひとつなので、もしかしたら死ぬまで終わらない修行かもしれないし、もしかしたら100歳くらいで、本当に魔女になれるんじゃないかと思う時があるんです。なのでアルバムやライブで歌の世界に入り込んで、キャラクターになりきるのも魔女修行の一環かもしれません。

 

ーー 老女と少女って表裏一体だっていう気がするんですよね。男性にはない魅力ですよね。

 

私おばあちゃんぽいって時々言われるんですよ(笑)

 

ーー でも才能のあるアーティストは老婆性も持ちあわせていますよ。老婆の中に少女もいるし、少女の中に老婆もいると思うんです。

 

なるほど、それいい言葉ですね。