AK Special Interview


柿原朱美の活動を経て、1998年EMI/Virginに移籍、アーティスト名を”AK”としてニューヨークに活動の拠点を移していた彼女がニューアルバム『SAY THAT YOU LOVE ME-BEST OF NY SWEET ELECTRO-』をリリース。ニューヨークに渡って以来、ダンスミュージック・アーティストとして変貌を遂げ、多くのフロアチューンを生み出し世界中のダンスチャートを席巻していたが、アルバムとしては実に8年ぶりとなる。それらのヒット曲、話題曲を収録していることはもちろん、2001年より活動の拠点をニューヨークに移し、NYレジェンドDJのDanny Krivitとの出会いで大きく変わった音楽観、人生観などが集大成されたアルバムになった。AK初のダンス、ハウス、エレクトロベストアルバムを引っさげて来日した彼女に、久々に再会、8年間のアーティスト活動についてインタビューしました。

 

 

-- 2002年の『AK TRILOGY』から8年ぶりですね。まずは、お帰りなさい! と言わせてください(笑)。久々にニューアルバム『SAY THAT YOU LOVE ME-BEST OF NY SWEET ELECTRO-』を引っさげて日本のメディアに登場ということになりますが、お気持ちはいかがですか。

 

ニューヨークを拠点に音楽活動はしていますが、日本には毎年ツアーなどで来ているので、そんなに距離感はないですけど、ニューアルバムのリリースで日本に戻ってくるのは、ニューヨークに住み始めてからは初めてのことなのでものすごくうれしいですね。

 

-- ニューヨークに住むようになってから、日本という国に対する印象とは変わりましたか。

 

昔からずっとロンドンが大好きで、もちろんニューヨークも。だから私の好きなものは海外にあると思っていたんですが、いざニューヨークに住んでみたら日本がすごく愛おしくなりました。「日本の良さは私に語らせて!」って言うくらい(笑)。最近は日本に帰るたびに日本でやりたいことをリストにしています。やっぱり、日本でしか手に入らないものがたくさんあるんですよね。いちじくとかね(笑)。ニューヨークでなんでも買えると思ったらそんなことはないんですよ。あと日本に帰ってきていちばん実感することは、女の子が優しいこと! これに尽きますね。日本人の女の子は優しくてキレイでふんわりとした人が多くて、これはたまんないですね(笑)。ニューヨークの女性はホントに気が強いんですよ。タクシーで普通にケンカしたりしますからね。

 

-- でも、ニューヨーク生活は9年目くらいになるわけですけれど、この間はAKにとってどんな日々でしたか。まあ、この話を聴いたら時間が足りないくらいですけれど(笑)。

 

自分でもニューヨークにこんなに長くいると思わなかったし、そもそも自分がニューヨークに永住するなんて思ってもみなかったんです(笑)。ダニー・クリヴィット(※NYのレジェンド DJ)と知り合ったことが私の人生を変えたきっかけになりました。まさか、自分がダンスフィールドの扉を開けるとは予想してなかったですからね(笑)。そして彼と出会ったおかげで、いろんな出会いが生まれ、音楽の範囲も広がり、何よりこの8年で数多くのアーティストとコラボレーションをすることができました。それは大きいですね。ニューヨークに住んだからこそ、このアルバム『SAY THAT YOU LOVE ME-BEST OF NY SWEET ELECTRO-』が作れたんだと改めて思います。それは間違いないですね。

 

-- 01年のアルバム『Love』のNYレコーディングのときに、ビヨンセやアッシャーのエンジニアだったKevin KD Davisから「AKはUSAから曲をリリースするべきだ」と言われて、背中を押されたというエピソードはとても印象的なんですが、それからいろいろ葛藤はあったわけですよね。

 

前2作のレコーディングのときもロンドンやLAで同じようなことを言われていたんですよ。「AKはアメリカで曲をリリースするべきだ」って。けど世界のトップエンジニアのケヴィンが「君は必ずUSでブレイクする!」って言ってくれた言葉がいちばん自分の背中を押してくれた気がしますね。元々私がアーティスト活動を始めたときから、世界中の人に自分の曲を聴いてもらうという夢がありましたしね。

 

-- そしてアメリカでのリリースの第一弾シングル「SAY THAT YOU LOVE ME」がヨーロッパをはじめとする各国でダンスチャートの1位になるわけですね。

 

この曲はニューヨークに住みはじめてすぐくらいに全米でリリースになって、歌詞が日本語だったにもかかわらず世界中のチャートで1位になったんですよね。AKのキャリアの中でも日本語の曲が世界中で1位になるというのは言葉にはできない驚きでしたね。

 

-- 2002年にリリースになった『AK TRILOGY』は今も売れ続ける驚異のロングセラーですが、このアルバムで初めてAKの名前を知ったファンは多いですよね。

 

そうなんです。それはとても感動的なことでしたね。しかも、最近になって「SAY THAT YOU LOVE ME」を聴いて「AKのファンになりました」という方もいるんですね(笑)。自分の中ではかなり昔の曲なのに……。あの曲は不思議で、古くなるどころか、時間が経っても新曲のようにして聴かれているような気がしますね。ファンでいてくれる方はビートだけではなく、詞の世界だったり、メロディーだったり、声だったりも好きでいてくれているようなので、ジャンルレスなボーダレスな音楽に今後は挑戦していきたいですね。

 

-- 個人的には、EMIに移籍してからAKの書く詞の世界が変わってきたような気がします。特に女性がAKの詞の世界に共感しているように思いますけど……。

 

そのとおりで、EMIに移籍してから詞の世界は随分変わったんですよね。それまでは表現したいと思っていることを形にできないジレンマがあったんですよ。でも、その頃からは自分の思いをストレートに表現するようになったんです。よき理解者やスタッフに恵まれているからだと思います。私が書く世界を変えようとする人はいないし、移籍して間もない段階で、いきなり「ニューヨークに行きます」って行っても、反対されることなく、それがAKのためになるんだったらという感じで快く送り出してくれましたし、世界リリースのためにいろんな人が尽力してくれましたからね。それは自分だけの力では実現できませんでしたから。そしてそうやって作った曲がファンからも共感されるようになってるということは非常にうれしいことです。

 

-- STUDIO APARTMENTのアルバム『FOR HER,FOR HIM,FOR YOU』に収録され、フィーチャリングで参加した「BEAUTIFUL SUNRISE」は名曲中の名曲として聴かれていますが、この曲に関してのエピソードを教えてもらえますか。

 

この曲はすごく思い入れがあるんです。曲を書く前にプライベートで身近な人を亡くしたので、命の尊さや瞬間の尊さみたいなものをすごく強く感じていて、その思いをメッセージとしてこの曲に込めたんです。そんな曲を多くの人たちに共感してもらえたことはすごくうれしく思いますね。日本でパフォーマンスをやったときにはみんなが歌詞を覚えてくれて、大合唱になって感激しました。

 

-- そして今年3月にリリースした「ALL DAY,ALL NIGHT, ALWAYS」は日本のiTunesチャートで1位を獲得しましたね。

 

この知らせを聞いたときは、ニューヨークで1日中舞い上がっていました(笑)。ダニーも喜んでくれて、その日の仕事を全部キャンセルしてハイラインという公園(※最近ニューヨークに出来た空中公園)にサンセットを見に連れてってくれたんですよ。しかも、この曲にはすごいドラマがあるんです。実は、去年12月の中旬くらい、締め切りの直前に、ホームスタジオがシステムダウンして復旧不可能になっちゃったんですね。それまでレコーディングしていたこの曲のトラックデータがすべてなくなってしまったんです。復旧させようとしても全然ダメなので、とてもじゃないけど締め切りに間に合わないから、この曲は今回辞退させてほしいと日本に連絡をしたんです。「スタジオのトラブルで無理です」って。そうしたら、レコード会社は、それでも待つと言ってくれたんです。そこまで言ってもらってるし、なんとか気持ちを立て直して、スタジオのセットアップと平行して死に物狂いでこの曲を作ったんです。だから1位を獲った時の喜びといったらなかったですね(笑)。

 

-- そして、今回のアルバム『SAY THAT YOU LOVE ME』はAKのニューヨーク・ライフがぎっしりとつまっているわけですが、結果的にはずいぶん時間がかかってしまいましたね(笑)。8年の間に作ってきた曲がようやくAKのダンスアルバムとして聴けるわけですけれど、出来上がってみた感想はいかがですか。曲を並べてみるとなんだか感慨深いものがありますよね。

 

感慨深いですよね……。特にこの1枚は粒がひとつずつ濃いというか、ひとつずつに8年間の歴史やメモリーが入っているし、時間の経過で成長している曲も多いですね。新曲もあるし、AK初カバーと初インストナンバーも収録されているし、かなり濃い1枚ですね(笑)。

 

-- 初めての収録となったインストとカバーについて聞かせてください。

 

 

元々わたしはジャズや映画音楽やクロスオーバーなどを聴いて育って、エウミール・デオダートからインスピレーションを受けて音楽を始めたので、いつかインストを作ってみたいというのがあったんです。カバーのスティーヴィー・ワンダーの「ゴールデン・レディ」は元々好きな曲だったのと、歌詞に共感しているので、歌うならこの曲しかないと思っていたんですね。

 

-- 新曲「IF YOU LOVE ME」はすでに名曲の香りがプンプンしますが(笑)、この曲はアルバム用の書下ろしですか。それともずっと暖めていた曲ですか。

 

 実はこの曲はわたしがニューヨークに来て最初に書いた曲なんです。ダニーに出会って恋をしてしまったあとに書いた曲なんです。だから、この曲はAKの初のダンストラック・プロダクションなんです。その頃、私はダンスミュージックを作ったことがなくて、見よう見まねで作ったんだけど、自分の中では全然、納得できる出来ではなかったわけ。だから、あまり人に聞かせるでもなく、ずっと寝かせていたんだけど、今回アルバムを作るに当たってダニーに改めて聴いてもらったら、「すごくいいよ!」って非常に絶賛してくれたんです。「そうなんだ! あれでよかったんだ」って(笑)。だから自分にとって思い出の1曲なんです。

 

-- AKはミュージシャンであるとともに今はダニー・クリヴィットという有名DJの奥様でもあるわけですが、最近はどんな生活を送っているのですか。

 

普段の日常は、当然ダニーとのマリッジライフなのでMUSICが150%っていう感じですね。まず部屋の中はレコードが見えない場所はない(笑)。8万枚以上あると思う。出会ったときから彼はMUSICに対するパッションが全然変わらないんです。そういうところに関して私は彼をすごくリスペクトしているし、ダニーも私のMUSICをいつもすごく誉めてくれる。いい関係が作れていると思いますね。そして、チルアウトするときは映画を見ます。ふたりとも映画が音楽と同じくらい大好きなんです。

 

-- 9月には日本でのツアーも控えていますが、意気込みを教えてください。どんなパフォーマンスになりそうですか。

 

このツアーはかなりスペシャルになります。ダニーもUKでアルバムのリリースが決まっているので2人のダブルリリースツアー。そして、ツアー中には私たちの結婚2周年記念日(9月21日)もあるので(笑)、セレブレーションツアーですね。

 

-- きっとアルバムはヒットするでしょうから、めでたいこと尽くしですね。では最後に、このアルバムを待ちわびたファンに是非メッセージをお願いします。

 

本当にこれだけ長い間待たせて「ごめんね!」というのと待っていてくれて「ありがとう!」ですね。ここに収録されている曲は今までアナログだったりダウンロードだったりと、バラバラに1曲ずつ買ってもらっていた曲ばかりだったんで、やっとまとめて聴いてもらうことができてうれしいです。これに尽きますね。そしてNYに住んだからこそこのアルバムが生まれたので、「I LOVE NY」という強い思いが込められています。